のんびり鉄道紀行

カメラを持ってふらふら鉄道旅をした記録を綴っています

石巻線の旅 ~女川駅編~


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時刻表の路線図を眺めていると、よく面白い駅名に出会うことがある。
読めない漢字であったり、どうしてこういった名前なのかと首を傾げたくなる様なヘンテコなものまで 日本の駅のネーミングはユニークなものが多い。

ネットが恐ろしく発達している世の中なので、入力すれば一発で分かるのだが、それでは何だか味気ない。
現地に行って自分の目でその姿を納めるまで色々想像している時間すらも楽しいものだ。


今回訪れた「女川」駅もその1つである。
女に川と書いて〝おんながわ〟ではなく〝おながわ〟と読む。
海女さんで有名な場所にあるのだろうか。はたまた女性受けしやすい様な小奇麗な駅なのか。
筆者は女川のここ2、3年の情報を知るまで こんな事をのん気に考えていたのである。



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松尾芭蕉の俳句でよく知られる松島の海を線路ギリギリでキハ110系が走り抜けていく。

まるで水面の上を走っているかのような錯覚にとられる程、多く静かに広大な海に思わずうっとりとしてしまう。
それまで意味の分からないと思っていた あの有名な俳句「ああ松島や、、、」と松尾芭蕉が言葉を無くして繰り返し呟いたのも納得が出来る。
松島や。ああ松島や。。。。


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女川まで運んでくれたキハ110系にも松尾芭蕉の紀行文のタイトルである「おくのほそ道」を漢字に書き換えてデザインされている。

おそらく彼になったつもりで この路線を旅して貰いたい というメッセージなのでは?と予想するが 先ほど「ああ松島や、、、」とぼそっと声に漏らしてしまったばかりなので このデザインを見るなり「あ、はい松尾芭蕉になりました」としか言いようが無い。
何せ、それくらい松島の海は美しかったのだから。



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女川駅へ降り立つとそこに想像以上に大きく綺麗な木造の立派は駅舎が建っていた。

実は女川は震災で駅が全破壊した場所として有名なのだが、2015年の3月に復興のシンボルとして総工費8億円をかけて建設されたそうだ。
駅をすぐ出た正面には無料の足湯。2階には温泉施設「ゆぽっぽ」なども設けられており、旅で疲れた体をゆっくり癒す事ができる。

冒頭で想像していた様に偶然にも再建設した女川駅は女性にも受け、小奇麗な駅として生まれ変わっていたのだ。




規模は小さいが駅からまっすぐ伸びた広場には洒落たアーケード施設が何件か経っていた。
観光者は、ここで食事や休息をのんびり取ることも出来る。

筆者は事前に獲れたての魚を調理してくれる食堂が存在するという情報を耳にしていたので アーケードをつき抜け漁港へと向かう。
海は目の前に広がり漁業施設の工場も確認できる。
しかし、、、いくら歩いてもその場所に着かないのだ。


それもその筈、道路の整備はまだ不完全であり 駅周辺以外は、ほぼ更地になので工事の策などが張り巡らされている。歩いても歩いてもまるで迷路のように行き止まりが多く、他の道を探すという作業をして小1時間かせ経った頃、大回りをして漁港に出る道をようやく見つけた。

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やっとの思いで到着した漁港には目当ての店は結局発見出来なかったものの ただ丁度雲から覗かせた太陽に照らされた海の美しさに またもや息を呑んだ。
おそらくこの景色はアーケード周辺をうろついているだけでは目にだけない風景だろう。

ひんやりとした風は透き通ったように目を閉じて 肺いっぱい吸い込むと、むしろ海鮮よりもこの空気を味わいに来たのかとさえ思ってくる。 

冬だというのに顔に大量に掻いた汗をぬぐいながら 私は「女川や。ああ女川や。」と呟くのであった。






表の記事には書ききれなかったその後の食事の話を是非伝えたいと思い綴らせて頂いた。
本編と合わせると長文になってしまうのだが 時間のある方は目を通していただければと思う。



長時間歩き回り疲労した足を引きずりながらアーケードに戻って来た時には、すっかり食事時も過ぎていた。
いくつかお洒落なカフェらしいものは何件かあるが そこは妥協せずに地元っぽい食べ物を味わいたかったので その中でもっともらしい食堂に駆け込んでみた。


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店内はスッキリとして清楚な雰囲気であり、手作りパンや地元で造った豊富な味を揃えたおから。酒などが並んでいる。
中々良さ気な所だなと肝心なメニューへふと目をやると そこには「お好み焼き」「わかめうどん」としか書かれていない。

はて、魚料理は置いていないのか?と一瞬疑問に思うが 改めてよくよく考えるとこんなに目と鼻の先に漁港があり海鮮が美味しいと言われる女川に海鮮が無いはずがないのだ。

出したくても出せないのである。




気になって調べてみると震災の影響で獲った魚などを保存する冷却する工場も全て流されてしまったのだという。
つまり女川は、いまだに漁業が出来ない状態になっているのだ。
その中でも唯一保存性の高いワカメだけが唯一の海鮮メニューとして並んでいるという事なので筆者も迷わずワカメを注文させて貰った。



店で働いているの地元で漁業などしていたと思われる年配者の方ばかりであり、作業もどことなく不慣れな感じが目に見えて伝わってくる。
厨房では注文が数件続いただけでてんわやんわしており、料理も完成する時間は普通の飲食店と比べてもあきらかに遅く決して凝ったものでもない。

だが、肝心なところはそこでは無いのだ。



調理場にいたおじさんが何度も頭を下げながら直接運んできてくれた わかめうどんは見た目すら素朴であるが抜群に味は美味しかった。
いや、美味しかったというよりは うどんそのものに温かみがあるのだ。
地元で獲れた自慢のワカメもポン酢をかけてそのまま食べれるものと うどんに入れて食べれる様にと二面性の味を堪能することが出来る。
ワカメを口にいれると磯の香りがめいっぱい広がり鼻から抜けていくのが何とも心地よかった。



うどんを食べながら店内を見渡すと 皆、見守るような眼差しで出来上がるのを待っていた。
ここに来ている人達もきっと同じ気持ちなのであろう。



女川は駅や周辺の施設すら格好のいいものが並んだが、まだまだ地元の人たちの生活が変わるわけではない。
それでも残って頑張りたいと思っている人たちが今も尚一生懸命働いているのだ。
色々な思いをめぐらせながら食べた わかめうどんは想像以上に美味しく気づけば私はスープまで飲み干していた。