のんびり鉄道紀行

カメラを持ってふらふら鉄道旅をした記録を綴っています

大船渡線の旅 ~気仙沼駅編~

image


鉄道は、自分の知らない世界を広げてくれる夢の様な乗り物。


筆者は、列車が好きになった高校の頃から、こういった気持ちで乗り続けている、、、のだが 中にはとある諸事情で廃線になってしまったもの。経営に苦しみながら何とか残っているもの。政治のために可笑しな命運を課された列車もある。

一ノ関駅盛駅間を走る大船渡線もその内の一つだ。




大船渡線は路線図でも確認できるように、鹿折唐桑駅から奇妙な方向へ大回りに線路がぐにゅっと曲がっている。
これは和田引水ならぬ和田引鉄が理由であり、政治家が自分の選挙区に益するように鉄道を誘致する事である。この大人の事情を隠すかのように大船渡線の愛称は龍に似た形からドラゴンレールと呼ばれているのだ。

なんとも複雑な感情になる裏事情であるが肝心の鉄道は、のどかな山々な景色をゆったりと走る列車でローカル線としては抜群なローケーションである。
ただ、乗車した時間の問題で辺りが真っ暗なことは除いて。。。



日中、広く歩き回ったからか自分が思っている以上に体には疲労がたまっており、気が付いたときには下車する気仙沼の一つ隣の駅であったのだ。
ただ乗るだけの鉄道旅は出来ればあまりしたく無いのだが、暗くなれば景色も見えず気持ちが半減するもの。今回ものの見事に睡魔に負けてしまったことを恥じながら 初日の宿泊地でもある気仙沼駅に黙々と降り立った。






木造の昔ながらの旅館に荷物を置き、身軽に我が身で「酒を飲むぞ!」と意気込みながらタクシーへ乗り込む。
行き先は事前にリサーチしておいた海鮮料理居酒屋だ。
やっと東北の魚介が食べれるとウキウキしながら現地に着いたはいいが、その期待とは裏腹に衝撃的な言葉を運転手から聞くはめになる。



「あーあ、、今日やってませんね。」



一瞬言葉を失ったが旅にはトラブルが付き物であり、こういう時にいかに柔軟に適応するかが楽しむ秘訣となってくる。まぁ、昼の女川に続いてトラブルが多すぎる気もするが。。。
そして、変に知ったかをするよりも正直に尋ねる方が大抵の事は上手くいくもの。筆者が得意な他力本願というやつだ。

「他に魚介を食べれる店でオススメはありませんか。」

と聞いてみると、そんなに魚色が強いわけでありませんが、、、とすぐ近くの別の店の前まで連れて行ってくれた。もう、この際食べ物にありつけるのなら不味くなければ何でもいい気がした。






実際店の前まで行ってみると中が見えないように のれんが掛かっており、いかにも常連客しか来ない様な飲み屋に思える。
これは中間は無く、大きく当たるか外れるかのパターンだ。普段であれば、他の店も見てからと考え直すかもしれないが 東北の夜は想像以上に寒く、早く店内に入りたかったのもあり勢いよく扉を開けた。


ガラガラガラッ。
目の前に現れたのは、カウンターにママがおり。座敷席では常連客と思われる年配の男性がくつろぐ光景であった。まさか、、、スナックなのか?
緊張した面持ちで とりあえずカウンターに座り、生ビールを注文したが〝料理を食べてイマイチならばすぐに出て行こう〟

そんな失礼なことを考えると コトッと静かに食事が置かれる。いや、まだ注文していないはずだ。早速ぼられるのか?
警戒して よくよく見てみると何とお通しだったのである。 image


お通しと言う割りには小鉢三点盛りという何とも豪華な組み合わせだ。しかも、どれも家庭の素朴な味で美味い。

筆者は〝お通しの美味しさで9割り決まる〟というジンクスを持っているのだが これは、ひょっとすると大当たりかもしれない。



 image
image
image





早速本日のオススメが書かれた品書きから「カンパチ刺し」「牡蠣酢」「湯豆腐」を注文した。
出てきたものは海鮮だというのに どれも肉厚で弾力があり、数回噛んだだけで とろけて無くなってしまう様な味わいだ。
湯豆腐も寒さで冷え切った体の置くまでジワーっと染み渡るようで優しい。そして何よりも出汁がその美味しさを決定付けているのである。

image



出てくるもの全てに美味い美味いと感動して、調子に乗って熱燗を頼んだ後、「おおすめの冷を下さい」 とお願いして出てきたものが「蒼天伝」という女川駅の売店で気になった日本酒だったのだ。大げさかもしれないが運命といっても過言ではないと思い ゆっくりと口に注ぐと まさに名前のようにスッキリとした爽やかな味がふわっと広がりフルーティーなほのかな甘みがたまらない。



料理に酒と大満足な上に最後はママ特性のお雑煮までサービスをしてもらい、新年が明けておめでたい日だからとお土産のタオルまでプレゼントしてもらえた。
タクシーの運ちゃんは、「魚色は濃くない」とは言っていたものの 結果的には予想を上回る美味しい店であった。
これが東北の〝普通〟のレベルなのだろうか。

この先の旅に益々の期待が込み上げながら、筆者は気分のいいほろ酔い気味で再びタクシーに乗り込んだ。