のんびり鉄道紀行

カメラを持ってふらふら鉄道旅をした記録を綴っています

大船渡線の旅 ~盛駅編~

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東北に来て2日目。いくら寒さの中を歩いているとはいえ、決して体が慣れてくる訳ではない。
相変わらず凍える体を引きずって到着したのは、BRT・大船渡線の終点 盛駅であった。

駅は意外な程に多く、構内には休憩スペースとしてテーブルや椅子が広々といくつか置かれ 隣の売店にも数えるほどだが地元の方たちがゆっくりと暖まって体を休める場所がある。
売店の女性達も笑顔で出迎えてくれ、これまでの疲れがホッと和む。


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駅を出ると部活の学生達が走りこみをしており すれ違った際に元気に「こんにちは!」と挨拶をしてくれた。
ローカルならでは光景に思わず筆者も「こんにちは」と答える。地元の人から見れば日常なのだろうが 寒さは寒さでも都会の独特に孤立した世界から来た人間にとっては こういうちょっとした出来事に深く感動してしまうのだ。
建物も多く建っており、綺麗な町であるので昼食探しがてら周囲散策してみる事にした。


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ひたすら道なりを歩くと大きな神社が見え来た。
せっかくなので街の神様に挨拶して行こうと立ち寄ってみると、遥か上へと続いているような長い石段を発見する。
一段一段のサイズが大きい上に頂上が見えないくらいまで長く続いている。

・・・・人は何故困難であるものを目にすると逆行に立ち向かっていきたくなるのだろうか。
そう冷静に考えたときには時既に遅し。重いキャリーケースを肩に担ぎながら上り始めていた。まったく人間というものは。。。




いくら日ごろ軽く走っているとは言え、さすがにこの高さの階段を上がるのは久しぶりである。
息が途切れ途切れになりながらも ゆっくり確実に足を踏み込みながら頂上を目指していく。
時間をかけて達成したその先にあったものは 公園と神社であった。

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どうやらここは天神山公園という施設らしく、春には桜の名所とも知られるちょっとした観光化スポットらしい。
天然記念物がある公園珍しいので地元の方の憩いの場となっているようだ。
遊具も廃止になった都会ではシーソーやグルグル回るボールの形をしたものがあったりと ちびっ子が楽しめそうな場所だ。
少し隣に目をやると神社もあったので、無事にここまで来れたことに感謝をしつつ手を合わせる。


何とも高台にある場所だが公園を軽く歩いて参拝した後に、街の方を見てみると済んだ景色が広がっており洗練された気持ちになっていく。これは苦労して上った価値が十分にあった。


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街の方へ降り、再び食事処を探し始めるが正月が明けてまもないからか空いている店はほとんど無く その作業は難航していた。軽くでもいいので何か口に入れたいと駄々をこねりそうになった時、小さい建物に〝魚長〟とデカデカと書かれた看板が。
これは食堂かもしれない! そう駆け込む様にして入ってみると、なんとそこは漁港で釣った魚を販売している魚センターだったのだ。

ご夫婦でやっている様な小さいお店で尋ねてみると 震災の影響で破損してしまったので新たに街の中へ建て替えた様だ。せっせと働きながらも太陽なような笑顔で答えたくれたお母さんは、見るからに人柄がにじみ出ていて それだけでも元気が貰える。



何も買わずに去るのも何なので どこかに座って刺身でも食べようとカンパチを購入することにし、「お箸はありますか」と事情を説明して頂こうとすると
なんとそのお母さんは、お箸と一緒に別皿に醤油を入れてラップで包んでくれたものを渡してくれたのだ。
「簡単ですけど、、、」と申し訳なさそうに差し出してくれるお母さんを見て、こちらこそ申し訳ないですと言いながらも その優しさに心の中で涙が流れる。



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早速、駅へと戻り休憩スペースでカンパチをいただくと トロケル様に天然の脂が舌にまとわりつきながら 数回噛むだけで無くなってしまった!さすが東北の漁港の魚!と絶するほどの美味しさに感動しつつペロリと平らげてしまった。多分、食事時間は3分とも満たなかったはずだ。



こうなって来ると〝もっと食べてみたい〟というのが人間の性であるのが普通だ。
筆者は急いで待ち歩きの際に見つけたが 店構えから値が張ると予想した寿司屋に目指して猛ダッシュした。
どうやら先ほどの階段といい、私は欲求を抑えられない人間のようだ。。。


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ガラガラッと空けた店内には、これまた老夫婦で営業されている老舗っぽい寿司屋だ。
ご夫婦二人でやっているところからして、もう当たりの予感しかしない。
早速メニューを見てみると また驚きで想像していたよりも全然安いのだ。
調子に乗って 握りの盛り合わせ(中)を注文することにしたのだが べらぼうに美味しいのだ。

貝はコリコリとした食感が楽しく、イクラは魚卵に弾けるような弾力があり まるで口の中で踊っているよう。そして刺身類はその新鮮さに磯の香りが広がりふんわりと優しい味わいだ。
こんなにも幸せな気持ちになっていいのか戸惑ってしまうくらいである。



こうして贅沢なまで盛り付けられた魚をかぶりつく様に食べ終わると よほどニヤニヤしながら食べていたのか女将さんが「どこからいらしたの?」とお茶を差し出してくれる。
筆者は、地方ならではの食事処での このようなやり取りこそが好きなのである。 
東北は本当に親切な方が多いなと しばらく窮屈に詰め込んだそのお腹が落ち着くまで談笑を楽しんだ。