のんびり鉄道紀行

カメラを持ってふらふら鉄道旅をした記録を綴っています

東武亀戸線の旅 ~小村井駅編~


SDIM0060




小型な東武鉄道8000系は都内を走るにはまったり過ぎるほどの空気感を醸し出している。

この8000系は、1963年に製造され もうすぐ60年選手にもなる。改良を重ねられも尚活躍する車両は私鉄の103系と評されていたりもする歴史のある鉄道だ。
その車体の小ささゆえに整備が追い付いておらず、塗装の剥がれ落ちや錆が目についたり 元々備わっているのが簡易な走行装置なので、ブレーキ機能上昇のために独特な匂い「東武臭」などが出現するので欠点も多い。

しかし、色落ちと無縁の最新設備を積んだステンレス車体が増えていく中で やはり8000系は貴重な存在であり、その劣る点すら可愛らしく見えてしまうものだ。
どうもこの鉄道が東武亀戸線を走る事は必然であったくらいマッチした ホームに停車している光景を惚れ惚れと眺めていた。



乗車時間わずか4分。
筆者は、小村井駅で下車した。
町工場がいくつか建っているのみの何の変哲も無い住宅街だが 亀戸だけのカメの形をした美味しいパン屋があるという風の噂で耳にしたのでせっかくなので探索に行くことにする。
駅を降りると 店らしいものはなく、国道の大きい通りに踏切がただただ鳴り響いているのみである。
どこか不思議とノスタルジーな気持ちになるのなぜだろう。

道なりを数分歩いても たまに小さな飲食店がちらつくのみでそれらしい店は一向に見つからない。
逆の道に行ってみたり、地図標識を眺めてみたりもするがたどり着かない。
さて、、、どうするか。
迷っている間に遭遇した警官に道を聞いてみようかとも試みるが、彼はキリっとした表情で交通違反を取り締まるのに必死そうだ。うん、、、とてもではないがチキンの筆者には到底尋ねられる訳がない。
あまり旅で電子機器の力を借りるのは気が引けるが  今回は警官の顔が怖かったのだから例外だ、、、。


スマホの地図を確認すると、途中で路地裏に入るらしい。どおりで道なりを歩き続けても着かないわけだ。
説明されるとおりの道を行き、角を曲がると小さな商店街が現れる。
整骨院や美容室などがぽつぽつと静かに並でいる中に 一軒だけ店の前にちょっとした女性の人だかりが出来た場所があった。
真上の看板を見上げると「かめパン」と木地に大きく太字でハッキリと書いてある。


SDIM0050



店内に入ると色とりどりに並べられたパンから香ばしい匂いがふんわりと漂う。
名物はかめパンだが、地元の主婦や子供たちが喜ぶようなラインナップがズラリと陳列されている様だ。
クリームパンやチョココロネ。チーズを使った創作系があると思えば、逆にあんぱんマンの形をしたパンがあったり。バライティに含んだ内容で見ているだけでも飽きが来ない。
店内の奥に進んでいくと 噂の大ボスの「かめパン」のご登場だ。
一つ一つ表情が違うという手作り感満載の外見に思わず胸を高鳴らせ トレーに入れてしまう。
筆者はその他にも、あんぱんマンパンとチョココロネを乗せレジに向かった。先に言っておくが甘党かよ というツッコミはご遠慮願いたい。。。



さて、どこで食べるかが問題なのだが 辺りを見渡しても公園らしい場所も無く、とりあえず再び亀戸線に乗り北千住へと出た。
北千住の駅は、北口改札を出ると大きな歩道橋があり そこには椅子が数個並んでいるのだ。
本日は、気温も春並みと温かいので 日に当たりながらのんびりと頂くことにする。



SDIM0063



あまりにもキュートな外見にかじるのを少々躊躇ってしまうが、、、、、パクリ。

かめパンは、ミニメロンパンの様な味だ。サクサクとした触感のなかにも ふわふわとした生地が心地いい。
他のチョココロネとアンパンまんパンも濃厚なチョコレイトが懐かしさを引き出す味となっている。
どれも子供の時に母親に連れられて行った近所のパン屋さんといった感じである。


一口食べるごとに、春の風にあたりながら 決してお金はかかっていないが贅沢な癒しの時を過ごした。

東武亀戸線の旅 ~亀戸駅編~

image








普段見慣れた景色でもカメラを構えれば一変。
いつもと違った景色に見えるので 近場の街歩きスナップはオススメしたい。

ファインダーを覗くだけで、何か目に見えているものから特別な場面を切り取ろうとする。
発見したいという思いが向上すれば 今度は、カメラを持ち歩かなくとも自然と細かく街を見渡すようになる。
中々面白いので いつも家でボーっとするのが日課の方には、良い刺激となるだろう、、、、、まぁ筆者のことなのだが。。。。


今回、旅に選んだのは 東武亀戸線である。
亀戸線は、都内を走るJRグループの路線なのだが 2両編成なうえ停車駅がわずか5駅ほどしかないというローカル色が非常に強い鉄道となっている。
その利用者はほとんどが地元民を指してもおかしくなく、ラッシュ時間以外は乗客も少なくマッタリと楽しめることが出来る。







image








よく晴れた気候も春に近い麗らかな日。まず、亀戸駅から降りて周囲を散策してみる。
商店街が立ち並び 散歩をしているだけでも目移りしてしまうが、まだ朝も早いからか営業している店もまばらだ。
上を見上げてみると ふと「梅まつり」と書いてある旗がズラーっと飾られており そこで始めてそういう季節なったのだと認識した。
もしかして、この旗を辿って行けば ここらで一番名の知れた神社、亀戸天神に着くかもしれない。
早速、「梅まつり」を頼りに目的地を目指す。







image









image








てくてくと程なくし10分ほど歩くと、鳥居が姿を現した。
参道にはレトロな雰囲気の店が何軒かあるが いずれにせよ、どこもシッターは閉じたままである。
はて、、亀戸天神とは こんなに静かなものなのだろううか。
首を傾けながら 鳥居の横の看板に目をやってみる。
 

「亀戸香取神社


、、、、旗につられて完全に間違えていた。

当然、梅なども咲いている訳もなく 中は静けさに満ちている。
さすがに、せっかく来たのだから何もせず引き返す訳にもいかず 神様へ挨拶という事で参拝させて貰った。
手を合わせた後、わきに並んで仏像が二体立っていた。
なんとなく近くに寄り見に行ってみると なんとその頭上に少量ながら 梅が咲いていたのだ。



image





きっと神様が「よく来たね」と意味を込めて 梅を見せて下さったのではないかと、勝手だがありがたい気持ちになり 木を守る様に立っている仏像にも合掌し、神社を後にした。




参道の終わりの角を曲がると すぐに「いちご大福」と大きく書かれた店があった。
これも長度季節もであるが、いちご大福なんて 日ごろ頻繁に口にするものでは無いし、店構えと縁起の良さに惹かれて たまらず即決で購入することに。
ショーケースを改めてじっくり眺めてみると 色んな種類の大福をはじめ、どら焼きや芋羊羹なども作っているそうだ。
たまらず 白い生地に黒々とした立派な豆が入った豆大福もお買い上げ。



しかし、時計に目を移せば まだ昼前なのである。

すぐさまその場で かぶりつきたい衝動を抑えながら 昼食と一緒に食べれる場所を探しに本来の目的である、亀戸駅へ足を向けた。

陸羽東線 ~鳴子温泉駅編~


P1020890


旅をする上で最も大事なことは、機転である。

日本の鉄道は大体時間通りに運行をするという素晴らしいものであるが、それが決して動いているとは限らないという事もある。特に真冬の雪が積もった東北では特に。



今回の旅の目的では、震災が起こった地を訪れる事であったが、それと同時に三陸鉄道が一昨年の春に全線開通というニュースを受けて乗ってみたいという思いがあった。小本―田野畑間は駅や高架橋が流失し、工事に時間がかかったという事もあり、まだまだ復旧は遠いものだと思っていたが こんなに早く運行が可能になるとは。
多くの方がご存知である「あまちゃん」のブームが少し落ち着いたこともあり、タイミングを計って旅を計画した。


しかし、プラン通りにいかないのが旅なのである。
遠野から似内駅で乗換えをし、東北線経由で盛岡まで来たがいいが 三陸鉄道北リアス線まで繋ぐ山田線が途中までしか走れないというアナウンスが構内に響いたのだ。
まさか、、と多大なる絶望感に襲われるが 八戸から回って当初の目的地を目指すとしても途中下車する時間は残されていない。これでは、鉄道にただ乗るだけの旅になってしまうので なんの思い出にもならないだろう。




とにかく呆然と突っ立っていても埒が明かないので、気づいたときには再び東北本線を逆走するような形で電車に乗り込んでいた。
乗客で込み合った車内でノートとペン、時刻表を開き別のルートを模索する。

最初に考えたのは、北上線経由で横手まで出て秋田新幹線で帰るルートだ。
ほっとゆだ駅で下車し温泉を堪能しようという考えであったが 温泉ならその通りに陸羽東線の通称湯けむりラインも存在していることに気づく。
陸羽東線には鳴子温泉駅というコケシで有名な駅があるのだが、のどかな田舎景色に囲まれた北上線と比べ山に囲まれた路線なのである。
そういえば、ここ最近海しか見ていないな という事もあり すぐさま一関経由で小牛田に戻り陸羽東線から新庄出て山形新幹線で帰るルートを叩き出すと どうやらこちらも大丈夫そうだ。


急遽行き先を鳴子温泉駅へと車内で決定した瞬間であった。

P1020876


P1020879


乗り換えが結構あるので辿り着くまでに疲労が増したが、雪に染まった山が現れだすと小麦色一面であった景色も一変迫力を増しテンションが上がるものだ。
やっとの事で鳴子温泉に到着したのは16時過ぎ。空腹と歩きつかれた体を引きずりながら、地元民が通うという古湯へと向かう。古めかしい温泉街には、大体、新湯と古湯があり、どちらも簡単な洗い場があり極度に熱い湯船とぬるま湯が備え付けているだけというシンプルな造りである。
筆者は昔から熱いお湯に浸かることを好んでいたので 迷わず駅からもアクセスがいい古湯を選択したというわけだ。


P1020883




訪れたのは駅から5分ほど歩いた場所にある建っている「滝の湯」。
鳴子温泉街から少し上がったところに温泉神社があり、その下に鳴子温泉のシンボル共同浴場 滝の湯がある。滝の湯のお湯は温泉神社の「ご神湯」を引いているそうだ。
千年以上前の噴火によって温泉が湧出して、これを祀って温泉神社ができ この温泉が滝の湯の起源である。何はともあれご利益を授かりそうなお湯なので これは期待できそうだ。


服を脱ぎ捨てるようにカゴに押し込み 現れた木造の湯船に慎重に足を入れると、熱い湯が体の心まで入ってくるように身を包んでくれた。
思わず歓喜のため息を漏らしながら目を閉じると これまでの疲れがじわーっと流れていくようだ。
白く濁った色と硫黄の臭いから 少しすっぱい様な香りがいかにも温泉に来たという雰囲気にさせてくれる。
利用者も筆者と成人女性の親子しかいないので ゆっくり体を休めることができた。



滝の湯を後にし、温泉街を散策してみると 温泉まんじゅう屋が並でいる中で 一軒こじんまりとしたと店を発見する。中を覗いてみると とてつもない量のみたらしに入った白玉がショーケースに並んでいるのだ。
普通の温泉まんじゅうを食べるだけでは物足りなさを感じ たまらず衝動に駆られ、その気になるみたらし団子を購入してみた。



image



帰りの車内で封を切ると 溢れんばかりのみたらしが姿を現す。
中に埋もれている白玉を救出するだけでも一苦労であり、さらにそこに みたらしを塗りたくって口に頬張ってみる。

モチモチとした白玉の触感もいいのだが 甘いじょっぱいタレがドロっと口内をいっぱいにする。
しかもこのタレがまた 甘すぎなくいくらでも舐められるのだ。
みっともない話だが ここまで美味しいタレに遭遇すると残すわけにもいかず、結局全て付属の箸で舐め切ってしまい みたらし団子を食べたというよりは、みたらしを大いに堪能したしまった。。。


image



もち米に腹を膨らませて苦しく横たわっていると、窓の向こうは雪で美しく化粧下山々が現れる。
外は吹雪に触れて見るからに寒そうなのだが、その広大さに惚れ惚れと見とれていながら 蜜を舐めすぎた苦しみには勝てず 再び横になるのであった。

釜石線~遠野駅編~


P1020860



二日目の宿がある遠野に着いたのは、日も沈んだ夕方過ぎであった。

遠野といえば、柳田國男氏が著した「遠野物語」の舞台となった街であり 昔から民謡などの昔話が語り継がれる場所でもある。
本編は119話から成り、続いて発表された『遠野物語拾遺』には、299話が収録されている。
また、これらの話は 今も尚存在している語り部の方から実際にインタビューを元に綴った内容である。


今夜宿泊するホテルには、なんとその語り部さんが時間毎に昔話を話して下さる会があるそうなのだ。
これは貴重な時間になるぞ とふつふつと期待が込み上げるが 駅を出れば物語と言えども、そこは東北の山に囲まれた街である。
物語だけに雪女でもいるんじゃないか と絶するような寒さに たまらず宿へ向かう足を加速させた。




部屋に荷物を置き、早速語り部さんがいらっしゃるホテルの地下へと移動した。
降りた先には、畳がひかれた広々とした和室が目に入る。昔ながらの部屋の造りを再現したものなのか 炉畳もそこには備え付けてあり、火が付いてないのにも関わらず 何故か体がぽかぽかと暖かく感じられた。

語り部と思われる年配の女性が 来客だと気づいたのか優しい笑顔で出迎えて下さった。
シーズンによって訪れる数に変動がある様だが今回の来客は筆者一人だけ。
「楽にして下さって良いですよ」と声を掛けてくれたが 広い空間に一対一という状況という事もあり、少し緊張した赴きになり思わず正座をしてピンと背中が伸びて聞く姿勢を整えた。





語り部さんは〝昔話の夕べ〟という冊子を配ってくださり、そこに収録されている話を一つずつ語り始めた。


「昔あったずもな(そうな)、、、」


遠野物語の話は全て遠野の方言で紹介され、全ての話の冒頭は、「昔あったずもな、、、」から始まる。
通常で言う「昔々あるところに、、、」と同じ様な意味合いだ。
全てが方言で展開されるので、多少話しの筋が分かるなくなる事もあるが、集中して最後まで耳を澄ませば大体の散りばめられた要点が線で繋がっていく。

今回話して下さった物語は「オシラサマ」・「河童淵」・「ザシキワラシ」の代表的な三つ。
昔話らしく不思議な内容が多く含まれているが決して今のアニメや本などの様にハッピーエンド多い訳でもない。むしろ逆に腑に落ちないようなものがほとんどなのだが、何にせよ聞き終わった後に更に興味を持てる話であることは間違いない。

また、物語発祥から名づけられた物の話まで そのストーリーの幅は様々である。
話の時間も一話、五分程度のものから一分のものと異なるので あっという間に語り部会の時間は終わってしまった。
もっと聞いてみたいという気持ちを抑えつつ、立ち上がろうとすると 足が思っていたよりも痺れていたらしくその場でヨロッと倒れてしまう。。。
心配して声を掛けて下さる語り部さんに「いや、ちょっと気を抜いてしまって、、、」とよく分からないカッコつけた言葉で返してしまう。
もし、この中で語り部の会に参加される読者の方がいるのなら 〝無理に正座を続けてはいけない〟ことをオススメしておく。






貴重な話を聞いた後は、宿に向かう途中で見つけた居酒屋に行った。
地元民に親しまれている飲み屋らしく、時期的に新年会で盛り上がっていたが 何とかカウンターへ通してもらうことが出来た。

「遠野街道」という気になる日本酒を見つけたので、それと合わせる様に「うに刺し」と「めかぶ」を注文する。 image




遠野街道は冷酒で頂いたのだが、想像を超えるようなフルーティーな甘みに 寒さでひどく乾燥した身も心も潤う様な心地いい気分になる。
うに刺しも これはまたトロトロと舌にまとわり付くような濃厚な味を放ち、めかぶは人生初めて口にしたが もずくと似ている外見とは違いコリコリとして食感がたまらない。更にそれに加え付け合せの大根おろしが 独特な辛味は皆無であり、また新鮮で美味しいこと。

これだけでも満足であるというのに、隣から何やら気になる会話が聞こえてくる。


「本当にここのコロッケは美味しいよな」
「ああ、おふくろの味を超えるくらい上手いんで ついついいつも頼んでしまうよ」


、、、なんとコロッケが美味しいとな?
地元の常連客ほど信用できる口コミは無いというのが筆者の鉄則でもあるので、通りがかった店員にすぐさま コロッケを注文した。
ちょっと安易な気もするが、たまには人に流されてみるのも大事なことだと一応言い訳をしておこう。



image



そして、楽しみに待ちわびた待望のコロッケが出てくる。

衣がサクサクとした俵型で見ているだけでも食欲をそそる一品だ。
早速口に運んでみると、サクッと割れた軽すぎない衣から出てきた ジャガイモがずっしりと詰まっており、まろやかにホクホクと筆者の舌を滑り降りていくのだ。
これぞまさに 母の味。
出てくるもの全てに感動するような上手さのラインナップである。


image


最後にサービスで自家製で亭主が漬けたというカブの漬物をいただいたのが 着色料を使わずに天然でこの赤さを実現しているようで 酢の味が程よく混ぜ合わせあり爽やかな味わいに箸が止まらないのである。

もし、遠野に未だ妖怪などがいるとしたら、こんな美味しい食べ物を作ってしまう 居酒屋の亭主がもしかしたら、、、とも思ったが それはさすがに失礼な話か。

大船渡線の旅 ~盛駅編~

P1020816


東北に来て2日目。いくら寒さの中を歩いているとはいえ、決して体が慣れてくる訳ではない。
相変わらず凍える体を引きずって到着したのは、BRT・大船渡線の終点 盛駅であった。

駅は意外な程に多く、構内には休憩スペースとしてテーブルや椅子が広々といくつか置かれ 隣の売店にも数えるほどだが地元の方たちがゆっくりと暖まって体を休める場所がある。
売店の女性達も笑顔で出迎えてくれ、これまでの疲れがホッと和む。


P1020792



駅を出ると部活の学生達が走りこみをしており すれ違った際に元気に「こんにちは!」と挨拶をしてくれた。
ローカルならでは光景に思わず筆者も「こんにちは」と答える。地元の人から見れば日常なのだろうが 寒さは寒さでも都会の独特に孤立した世界から来た人間にとっては こういうちょっとした出来事に深く感動してしまうのだ。
建物も多く建っており、綺麗な町であるので昼食探しがてら周囲散策してみる事にした。


image




ひたすら道なりを歩くと大きな神社が見え来た。
せっかくなので街の神様に挨拶して行こうと立ち寄ってみると、遥か上へと続いているような長い石段を発見する。
一段一段のサイズが大きい上に頂上が見えないくらいまで長く続いている。

・・・・人は何故困難であるものを目にすると逆行に立ち向かっていきたくなるのだろうか。
そう冷静に考えたときには時既に遅し。重いキャリーケースを肩に担ぎながら上り始めていた。まったく人間というものは。。。




いくら日ごろ軽く走っているとは言え、さすがにこの高さの階段を上がるのは久しぶりである。
息が途切れ途切れになりながらも ゆっくり確実に足を踏み込みながら頂上を目指していく。
時間をかけて達成したその先にあったものは 公園と神社であった。

P1020794


image


どうやらここは天神山公園という施設らしく、春には桜の名所とも知られるちょっとした観光化スポットらしい。
天然記念物がある公園珍しいので地元の方の憩いの場となっているようだ。
遊具も廃止になった都会ではシーソーやグルグル回るボールの形をしたものがあったりと ちびっ子が楽しめそうな場所だ。
少し隣に目をやると神社もあったので、無事にここまで来れたことに感謝をしつつ手を合わせる。


何とも高台にある場所だが公園を軽く歩いて参拝した後に、街の方を見てみると済んだ景色が広がっており洗練された気持ちになっていく。これは苦労して上った価値が十分にあった。


P1020799





街の方へ降り、再び食事処を探し始めるが正月が明けてまもないからか空いている店はほとんど無く その作業は難航していた。軽くでもいいので何か口に入れたいと駄々をこねりそうになった時、小さい建物に〝魚長〟とデカデカと書かれた看板が。
これは食堂かもしれない! そう駆け込む様にして入ってみると、なんとそこは漁港で釣った魚を販売している魚センターだったのだ。

ご夫婦でやっている様な小さいお店で尋ねてみると 震災の影響で破損してしまったので新たに街の中へ建て替えた様だ。せっせと働きながらも太陽なような笑顔で答えたくれたお母さんは、見るからに人柄がにじみ出ていて それだけでも元気が貰える。



何も買わずに去るのも何なので どこかに座って刺身でも食べようとカンパチを購入することにし、「お箸はありますか」と事情を説明して頂こうとすると
なんとそのお母さんは、お箸と一緒に別皿に醤油を入れてラップで包んでくれたものを渡してくれたのだ。
「簡単ですけど、、、」と申し訳なさそうに差し出してくれるお母さんを見て、こちらこそ申し訳ないですと言いながらも その優しさに心の中で涙が流れる。



image




早速、駅へと戻り休憩スペースでカンパチをいただくと トロケル様に天然の脂が舌にまとわりつきながら 数回噛むだけで無くなってしまった!さすが東北の漁港の魚!と絶するほどの美味しさに感動しつつペロリと平らげてしまった。多分、食事時間は3分とも満たなかったはずだ。



こうなって来ると〝もっと食べてみたい〟というのが人間の性であるのが普通だ。
筆者は急いで待ち歩きの際に見つけたが 店構えから値が張ると予想した寿司屋に目指して猛ダッシュした。
どうやら先ほどの階段といい、私は欲求を抑えられない人間のようだ。。。


image

ガラガラッと空けた店内には、これまた老夫婦で営業されている老舗っぽい寿司屋だ。
ご夫婦二人でやっているところからして、もう当たりの予感しかしない。
早速メニューを見てみると また驚きで想像していたよりも全然安いのだ。
調子に乗って 握りの盛り合わせ(中)を注文することにしたのだが べらぼうに美味しいのだ。

貝はコリコリとした食感が楽しく、イクラは魚卵に弾けるような弾力があり まるで口の中で踊っているよう。そして刺身類はその新鮮さに磯の香りが広がりふんわりと優しい味わいだ。
こんなにも幸せな気持ちになっていいのか戸惑ってしまうくらいである。



こうして贅沢なまで盛り付けられた魚をかぶりつく様に食べ終わると よほどニヤニヤしながら食べていたのか女将さんが「どこからいらしたの?」とお茶を差し出してくれる。
筆者は、地方ならではの食事処での このようなやり取りこそが好きなのである。 
東北は本当に親切な方が多いなと しばらく窮屈に詰め込んだそのお腹が落ち着くまで談笑を楽しんだ。

BRTの旅 ~陸前高田駅編~


P1020788


私はバスやタクシーが嫌いである。

いきなり否定文から入ってしまうのは良くない事だが、理由はあの車内独特な臭いから来る乗り物酔いだ。
幼い頃の筆者は、酔いやすかったため、どうも電車以外の乗り物は好きになれず いつも曇った顔でぼーっと車窓を見つめては「早く目的地に着かないかな。。。」胸を擦りながら必死に祈ってる様な子供であった。


今でも長時間バスに乗る事は苦手だが、今回の旅ではこれほど嫌いなバスでも切なさで胸を込み上げられる事になる。





気仙沼宿泊後 さっそく早朝から冷たくも眩しいほど煌びやかな日差し照らされながら民宿を出た後 駅からBRTに使っての移動が始まる。
BRTとは、「Bus Rapid Transit」の略であり、日本語に訳すと「バス高速輸送システム」となる。
バス専用道路を確保することで 通常よりも高速による移動が可能となり時間通りの配分でルートを回ることを可能にしたシステムだ。
発信元はブラジルだが 日本でも廃線となった鹿島鉄道代行バス「かしてつバス」が国道の渋滞を回避するためにその廃線跡をバス専用道として利用している。


しかし、この気仙沼線 柳津・気仙沼間、大船渡線 気仙沼・盛間 津波による震災により線路が破損してしまったため 元々あった線路を埋め立て全てBRTシステムへと変貌を遂げることになる。
そのおかげで早期・低コストによる交通機関の復旧を可能としたが 始め鉄道会社の方たちどういう決心でこの選択を選んだと思うと胸がキリキリと痛む。



P1020789



ホームから既に道路となり、車掌の服をまとった運転手。いや現在はバスの運転手と名の車掌が席に座っていた。
BRTになって3年の月日が流れたからか乗車客たちは当たり前のように乗り込んでいくが 道を進んでいくにつれ徐々に筆者は複雑な心境になっていく。
線路だったはずの道が道路となり、いくつもあるトンネルをバスが通り抜け、踏み切りの中もバスは進んでいく。
実際に乗った経験は無かったが気仙沼線の過去の姿を想像して窓へと目を向ける。
だが、いくらイメージしてみても現実に再生されることは無く バスはぐんぐんと進んでいく。時は止まってはくれない。





いくつか駅を通り過ぎ 陸前高田駅に到着する。
高校卒業前の三年前に来た以来の地だ。この東北の旅の目的であり1番来てみたかった場所である。
バスを後にし進んでいくが周りに建物はなく、風が魔物のように容赦なく吹き狂い進むのもあまりの寒さに困難なほどだ。
駅の近くにある唯一のコンビニであるセブンで防寒具を揃え、やっとの事で町全体を見渡せる場所まで来たが、そこから見えた風景は更地にシャベルカーがぽつぽつと停まっているだけで風景だったのだ。
思っていたよりも衝撃的だった。何せ東京では悠々と節電などという言葉は消え当たり前のように過ごしているのに 直接震災を受けた街は、ほぼ変わっていなかったのだから。

瓦礫で街を歩けない状態からは進歩したかもしれないが、少しでも復旧して数件建物くらいは建っているだろうという考えは見事に打ちのめされ 言葉も出なかった。街を一から作り直すという事はこんなにも時間と費用を要する。





そして、散策の時間を2時間確保していたのにも関わらず寒さと距離からは その更地に行く事も出来ず、周辺の民家を歩き回ってもどこも喫茶店は10時開店だったりするので はやくも心が折れ途方にくれてしまった。
寒さと思っても無かった光景に疲労を覚えながらフラフラと自然と足が向かった先は陸前高田駅。情けなさを感じながらも帰って来てしまったのだ。皮肉にも写真も一枚も撮っていなかった。

数十分の間、寒さで悴んだ体を温めているとバスが到着。車内に入ると年末年始のシーズンだからかクリスマス使用の飾りつけがされてあった。
まさかの思ってもいないサプライズにジンワリ心が温かくなる。


ただ現地に訪れただけで何も出来なかったが、まるで「そんなに落ち込むなよ」言わんばかりにバスに揺られて行く。


image


そう、これで肩を落としてしまっては現地で頑張っている街の方たちにむしろ失礼だ。
筆者は、こうして嫌いだったBRTに慰められながら 初のバス旅は幕を閉じた。

大船渡線の旅 ~気仙沼駅編~

image


鉄道は、自分の知らない世界を広げてくれる夢の様な乗り物。


筆者は、列車が好きになった高校の頃から、こういった気持ちで乗り続けている、、、のだが 中にはとある諸事情で廃線になってしまったもの。経営に苦しみながら何とか残っているもの。政治のために可笑しな命運を課された列車もある。

一ノ関駅盛駅間を走る大船渡線もその内の一つだ。




大船渡線は路線図でも確認できるように、鹿折唐桑駅から奇妙な方向へ大回りに線路がぐにゅっと曲がっている。
これは和田引水ならぬ和田引鉄が理由であり、政治家が自分の選挙区に益するように鉄道を誘致する事である。この大人の事情を隠すかのように大船渡線の愛称は龍に似た形からドラゴンレールと呼ばれているのだ。

なんとも複雑な感情になる裏事情であるが肝心の鉄道は、のどかな山々な景色をゆったりと走る列車でローカル線としては抜群なローケーションである。
ただ、乗車した時間の問題で辺りが真っ暗なことは除いて。。。



日中、広く歩き回ったからか自分が思っている以上に体には疲労がたまっており、気が付いたときには下車する気仙沼の一つ隣の駅であったのだ。
ただ乗るだけの鉄道旅は出来ればあまりしたく無いのだが、暗くなれば景色も見えず気持ちが半減するもの。今回ものの見事に睡魔に負けてしまったことを恥じながら 初日の宿泊地でもある気仙沼駅に黙々と降り立った。






木造の昔ながらの旅館に荷物を置き、身軽に我が身で「酒を飲むぞ!」と意気込みながらタクシーへ乗り込む。
行き先は事前にリサーチしておいた海鮮料理居酒屋だ。
やっと東北の魚介が食べれるとウキウキしながら現地に着いたはいいが、その期待とは裏腹に衝撃的な言葉を運転手から聞くはめになる。



「あーあ、、今日やってませんね。」



一瞬言葉を失ったが旅にはトラブルが付き物であり、こういう時にいかに柔軟に適応するかが楽しむ秘訣となってくる。まぁ、昼の女川に続いてトラブルが多すぎる気もするが。。。
そして、変に知ったかをするよりも正直に尋ねる方が大抵の事は上手くいくもの。筆者が得意な他力本願というやつだ。

「他に魚介を食べれる店でオススメはありませんか。」

と聞いてみると、そんなに魚色が強いわけでありませんが、、、とすぐ近くの別の店の前まで連れて行ってくれた。もう、この際食べ物にありつけるのなら不味くなければ何でもいい気がした。






実際店の前まで行ってみると中が見えないように のれんが掛かっており、いかにも常連客しか来ない様な飲み屋に思える。
これは中間は無く、大きく当たるか外れるかのパターンだ。普段であれば、他の店も見てからと考え直すかもしれないが 東北の夜は想像以上に寒く、早く店内に入りたかったのもあり勢いよく扉を開けた。


ガラガラガラッ。
目の前に現れたのは、カウンターにママがおり。座敷席では常連客と思われる年配の男性がくつろぐ光景であった。まさか、、、スナックなのか?
緊張した面持ちで とりあえずカウンターに座り、生ビールを注文したが〝料理を食べてイマイチならばすぐに出て行こう〟

そんな失礼なことを考えると コトッと静かに食事が置かれる。いや、まだ注文していないはずだ。早速ぼられるのか?
警戒して よくよく見てみると何とお通しだったのである。 image


お通しと言う割りには小鉢三点盛りという何とも豪華な組み合わせだ。しかも、どれも家庭の素朴な味で美味い。

筆者は〝お通しの美味しさで9割り決まる〟というジンクスを持っているのだが これは、ひょっとすると大当たりかもしれない。



 image
image
image





早速本日のオススメが書かれた品書きから「カンパチ刺し」「牡蠣酢」「湯豆腐」を注文した。
出てきたものは海鮮だというのに どれも肉厚で弾力があり、数回噛んだだけで とろけて無くなってしまう様な味わいだ。
湯豆腐も寒さで冷え切った体の置くまでジワーっと染み渡るようで優しい。そして何よりも出汁がその美味しさを決定付けているのである。

image



出てくるもの全てに美味い美味いと感動して、調子に乗って熱燗を頼んだ後、「おおすめの冷を下さい」 とお願いして出てきたものが「蒼天伝」という女川駅の売店で気になった日本酒だったのだ。大げさかもしれないが運命といっても過言ではないと思い ゆっくりと口に注ぐと まさに名前のようにスッキリとした爽やかな味がふわっと広がりフルーティーなほのかな甘みがたまらない。



料理に酒と大満足な上に最後はママ特性のお雑煮までサービスをしてもらい、新年が明けておめでたい日だからとお土産のタオルまでプレゼントしてもらえた。
タクシーの運ちゃんは、「魚色は濃くない」とは言っていたものの 結果的には予想を上回る美味しい店であった。
これが東北の〝普通〟のレベルなのだろうか。

この先の旅に益々の期待が込み上げながら、筆者は気分のいいほろ酔い気味で再びタクシーに乗り込んだ。